巷では、「ほとんどの場合には母親になるんでしょ」と言われていますが、
小さい子の場合にはその通りです。
母性優先の原則というのがあり、
特に乳幼児期には、子供の健全な発育に母性の果たす役割が重要だという考え方です。
たしかに「母の腕(胸)に抱かれているような…」というのはよく聞きますが、
「父の腕(胸)に…」というのはあまり聞きません。
母がいないと生存できない、という動物(ほ乳類)的な原則が
乳幼児期には当てはまるということでしょうか。
子どもがある程度大きくなっていて、自分の意思表示がきちんと行える場合、
子どもの意思表示をどの程度斟酌するかの問題があります。
もちろん、3歳児でも、「パパとママとどっちがいい?」と聞けば、
そのときの気分によって「ママ」と言ったり「パパ」と言ったりしますが、
このような意思表示を問題とするわけではありません。
感覚的には小学校高学年くらいになると、
ある程度考えた上で、どちらと一緒に暮らしたいかの意思表示が行えると思われます。
そして、その場合には、
その子の意思に反した親権者の指定というのはかなり難しいことになります。
「客観的にはお母さん(お父さん)の方がいいから」と言って、
そちらに連れて行くことは理屈上は可能でしょうが、
いやがる子を無理矢理同居させるというのは実際上は困難です。
ただし、十分に気をつけなければならないことは、
子供の表面上の意思表示と内心とのギャップを見分けなければならないということです。
通常は、例えば、現状、父親と暮らしている場合に、
「お父さんは嫌だ。お母さんと暮らしたい。」とはまず言えません。
父親に気兼ねするからです。
このような場合には家庭裁判所の調査官が子供と面談をすることになりますが、
このギャップがないかについては十分に配慮してもらいたいところです。
子供にとって、どちらがいいのかというのは、
言うのは簡単ですが、本当に本当に難しい問題です。
なんでもかんでも子供の希望が叶えられる環境が優れていて、
子供が我慢を強いられる環境が悪いとは一概には言えません。
それに、育った子供が本当にいい子に育ったのかについて判定することもできませんし、
検証不可能なのです(「いい子」の定義もありませんし)。
ただ、1つだけ言えることは、
「きちんと食わせていけるか」ということだけは、真剣に考える必要があります。
女性の相談者の方が圧倒的に多いですが、これだけは必ず確認します。
途中で、やっぱり子供を食べさせていくことは出来ない、などと弱音を吐かずに頑張れるか、
これから親権を争っていこうという際には、それはよく考えて欲しいです。